B級的チューナーで遠距離FM受信を楽しもう(最終回) [遠距離受信]
前回の要点は、島根県のBSSラジオのFM電波(出力0.5kW)は、278km離れた福岡県の市街地に常時到達していて、八木アンテナを使えば屋内の据置型チューナでSINPOコード34433で受信可能というものでした。
次はもっと遠い放送局を狙うことになりますが、電波は距離の2乗に比例して減衰、すなわち距離が2倍になれば電波強度は1/4になるので、BSSラジオ(278km, 0.5kW)を基準にすると、仮に550km離れた送信所の電波出力は理論上は2kW以上あればよいということになりますが、この条件を満たすのは在阪FM局しかありません。でも実際には気象状況や山岳回折によってさらに電波は減弱するはずです。
九州で受信できる可能性のある在阪FM局は次の4つです。
周波数(MHz) 出力 送信所
76.5 FM COCOLO 10kW 生駒山(642m)
80.2 FM802 10kW 飯盛山(314m)
85.1 FM大阪 10kW 飯盛山(314m)
88.1 NHK-FM 10kW 飯盛山(314m)
このうちFM大阪とNHK-FM(大阪)は福岡では同一周波数を使用する近隣局の影響で受信できません。そのためFM COCOLOかFM802を狙うしかないのですが、どちらも隣接局が強力なので隣接局妨害排除能力の優れたチューナーが必要です。
アキュフェーズの高級チューナーを使えば最適なのでしょうが、B級派としては1万円の壁にこだわりたいので、中古市場で手軽に手に入るコスパの高いチューナーしか使いません。
次にFM大阪のサービスエリアとFM COCOLOが聴けるお店のマップを示します。
FM大阪のサービスエリア
FM COCOLOの可聴エリア
FM802の可聴エリアも概ね同じと思われます。
岡山以西での受信は厳しそうです。
ことさら九州での受信は絶望的とも思えます。
それでも無謀と言われてもチャレンジしてみました。
まずはFM COCOLOから・・・
八木アンテナが向いているルート上にある76.4MHzの下関カモンFMがSINPO55555で入感するので、76.5MHzのFM COCOLOは受信できるはずがありません。
しかもカモンFMは24時間放送のため、停波を狙うことすらできません。
でもほんとのことを言うとチューニングポイントをずらして受信できます。
同調点を少しずらせば受信できますが、カモンFMと混信が激しいので実用性はありません。
ここは潔く諦めましょう。でも電波が届いていることは確認できました。
最後の頼みFM802ですが、80.0MHzと80.4MHzの隣接局はどちらもSINPOコード55555なので手ごわいです。
結果は・・・
八木アンテナ+Super Narrow切替にてFM802受信中
8素子八木アンテナ+Super Narrow切替にて450km離れたところから飛んでくるFM802の電波を、SINPOコード33323で1日中受信できることを確認しました。時々中期周期のフェージングで一時的に沈んでしまうことがありますが実用性はまずまずです。
たぶん宮崎でも受信できるので、FM電波は山岳回折で500km飛ぶはずです。
----------ここからおまけ----------
FM802が比較的良好に受信できるので、同じルート上にあるFM KOBE(89.9MHz)を受信できないか、1週間毎日チェックしました。
結論から言うと受信できました。
摩耶山(標高702m)から送信されるFM KOBE(1kW)をSINPO23222で受信中
ただし受信状態が安定せず、まともに聴けない時間帯のほうが多いです。実用的ではありません。
それもそうでしょう。摩耶山送信所まで距離は411kmありますし、送信出力が1kWでは実用的な常時受信を期待するほうがおかしいですよね。
----------最後に----------
FM-DXingをしている人って日本に何人くらいいるんでしょうね。
西日本や中部地方の報告を目にすることはあるのですが、東北地方の報告はあまり見たことがありません。
盛岡で在京FM局を比較的安定した状態で受信できるという報告をどこかで目にしましたが、東京タワー~盛岡間の距離は465kmで途中に山岳回折に適した500-600m級の山が点在することからこの報告は本当だと思います。
具体的にご本人の報告を見たいところです。東北のFM-DXerたちの受信報告を待っています。
次はもっと遠い放送局を狙うことになりますが、電波は距離の2乗に比例して減衰、すなわち距離が2倍になれば電波強度は1/4になるので、BSSラジオ(278km, 0.5kW)を基準にすると、仮に550km離れた送信所の電波出力は理論上は2kW以上あればよいということになりますが、この条件を満たすのは在阪FM局しかありません。でも実際には気象状況や山岳回折によってさらに電波は減弱するはずです。
九州で受信できる可能性のある在阪FM局は次の4つです。
周波数(MHz) 出力 送信所
76.5 FM COCOLO 10kW 生駒山(642m)
80.2 FM802 10kW 飯盛山(314m)
85.1 FM大阪 10kW 飯盛山(314m)
88.1 NHK-FM 10kW 飯盛山(314m)
このうちFM大阪とNHK-FM(大阪)は福岡では同一周波数を使用する近隣局の影響で受信できません。そのためFM COCOLOかFM802を狙うしかないのですが、どちらも隣接局が強力なので隣接局妨害排除能力の優れたチューナーが必要です。
アキュフェーズの高級チューナーを使えば最適なのでしょうが、B級派としては1万円の壁にこだわりたいので、中古市場で手軽に手に入るコスパの高いチューナーしか使いません。
次にFM大阪のサービスエリアとFM COCOLOが聴けるお店のマップを示します。
FM大阪のサービスエリア
FM COCOLOの可聴エリア
FM802の可聴エリアも概ね同じと思われます。
岡山以西での受信は厳しそうです。
ことさら九州での受信は絶望的とも思えます。
それでも無謀と言われてもチャレンジしてみました。
まずはFM COCOLOから・・・
八木アンテナが向いているルート上にある76.4MHzの下関カモンFMがSINPO55555で入感するので、76.5MHzのFM COCOLOは受信できるはずがありません。
しかもカモンFMは24時間放送のため、停波を狙うことすらできません。
でもほんとのことを言うとチューニングポイントをずらして受信できます。
同調点を少しずらせば受信できますが、カモンFMと混信が激しいので実用性はありません。
ここは潔く諦めましょう。でも電波が届いていることは確認できました。
最後の頼みFM802ですが、80.0MHzと80.4MHzの隣接局はどちらもSINPOコード55555なので手ごわいです。
結果は・・・
八木アンテナ+Super Narrow切替にてFM802受信中
8素子八木アンテナ+Super Narrow切替にて450km離れたところから飛んでくるFM802の電波を、SINPOコード33323で1日中受信できることを確認しました。時々中期周期のフェージングで一時的に沈んでしまうことがありますが実用性はまずまずです。
たぶん宮崎でも受信できるので、FM電波は山岳回折で500km飛ぶはずです。
----------ここからおまけ----------
FM802が比較的良好に受信できるので、同じルート上にあるFM KOBE(89.9MHz)を受信できないか、1週間毎日チェックしました。
結論から言うと受信できました。
摩耶山(標高702m)から送信されるFM KOBE(1kW)をSINPO23222で受信中
ただし受信状態が安定せず、まともに聴けない時間帯のほうが多いです。実用的ではありません。
それもそうでしょう。摩耶山送信所まで距離は411kmありますし、送信出力が1kWでは実用的な常時受信を期待するほうがおかしいですよね。
----------最後に----------
FM-DXingをしている人って日本に何人くらいいるんでしょうね。
西日本や中部地方の報告を目にすることはあるのですが、東北地方の報告はあまり見たことがありません。
盛岡で在京FM局を比較的安定した状態で受信できるという報告をどこかで目にしましたが、東京タワー~盛岡間の距離は465kmで途中に山岳回折に適した500-600m級の山が点在することからこの報告は本当だと思います。
具体的にご本人の報告を見たいところです。東北のFM-DXerたちの受信報告を待っています。
B級的チューナーで遠距離FM受信を楽しもう(その2) [遠距離受信]
前回に引き続き、B級的チューナーで遠距離FM受信しようという企画です。
遠距離FM受信の概念は民放FM4局時代の1970年代にはじまります。
当時は東京、愛知、大阪、福岡の4都市にしか民放FMがなかったので、サービスエリア外からは大きなアンテナを建てて遠距離受信するしかなかったのです。
当時遠距離受信を目指す人はチューナーの感度よりアンテナを重視していたと思います。
その後1982年に5番目の民放「FM愛媛」開局を皮切りにFM多局化時代がやってきて、各メーカーがこぞって新しいチューナーの開発を始めて、安くて高性能なチューナーがどんどん発売されました。これをFM黄金時代といいます。(FM黄金時代についてはステレオ時代Vol.9に特集記事があります。)
下の写真は、「季刊・オーディオアクセサリー 1982秋号」の特集記事ですがこれを見ると当時のFMフィーバーぶりが伝わってくるのではないでしょうか。
上記の30チューナースクランブルテストでは宇都宮から約100km離れたFM東京(80.0MHz)を遠距離受信するときに、地元NHK-FM宇都宮(80.3MHz)の混信を避けることができるかどうか300kHz隣接局妨害排除能力のテストをしています。
この当時は300kHz隣接局妨害排除能力でよかったのかもしれませんが、コミュニティFM開始後は0.1MHz間隔でFM局がひしめき合うように乱立してきましたので、FM-DXingには300kHzよりさらに厳しい条件の200kHz隣接局妨害排除能力が求められます。
そして2014年から本格的にFM補完放送が始まりました。
元々これはTVがアナログ放送だった時代に使用していた90~108MHzのうち95MHzまでを中波の放送局に開放して難聴地域を減らす計画で始まったのですが、近い将来に民放中波がすべてFM放送に移行することが決定しています。
FM補完放送には76~90MHzを使用している放送局もあるので、FM周波数帯はさらに密になりました。
その一例として山陰放送BSSラジオ(島根・鳥取)のFM補完放送を紹介します。
出力が500Wと低めなので聴ける範囲が狭く、島根に住んでいても西部はサービスエリア外となっています。
ところが島根県から遠く離れた福岡県内の自宅にあるチューナーで常時受信できることがわかりました。枕木山の送信所から距離にして278km離れています。ルート上には500m級の山が数多く点在し、山岳回折によって電波が到達していると考えられます。
枕木山(標高453m)の送信所まで278km(出力500W)
これまでは地元局CROSS FM(87.2MHz)の0.1MHz隣接局なので最初からあきらめていたのですが、最近手に入れたSuper Narrow切替のあるチューナーでたまたま受信できました。
8素子八木アンテナ+Super Narrow切替で偶然受信できたBSSラジオ
もしかしてと思い、ほかのチューナーでも丹念に確認作業すると、Narrow切替にしてファインチューニングで87.07MHzにずらすとちゃんと受信できました。
レベル0ですが聴感上はシグナル2~3出ています。
0.03MHzずらすだけで受信状況が劇的に変わります!
現在ほぼ1日中SINPOコード34433(MONO)でゆったりリスニングできています。BSSラジオは「音楽の風車」という長寿番組が気に入って毎日のリスニングが楽しみになりました(^-^)
次回はこのシリーズ最終回「自宅で400km超のFM放送遠距離受信に挑戦!」をお伝えします。
遠距離FM受信の概念は民放FM4局時代の1970年代にはじまります。
当時は東京、愛知、大阪、福岡の4都市にしか民放FMがなかったので、サービスエリア外からは大きなアンテナを建てて遠距離受信するしかなかったのです。
当時遠距離受信を目指す人はチューナーの感度よりアンテナを重視していたと思います。
その後1982年に5番目の民放「FM愛媛」開局を皮切りにFM多局化時代がやってきて、各メーカーがこぞって新しいチューナーの開発を始めて、安くて高性能なチューナーがどんどん発売されました。これをFM黄金時代といいます。(FM黄金時代についてはステレオ時代Vol.9に特集記事があります。)
下の写真は、「季刊・オーディオアクセサリー 1982秋号」の特集記事ですがこれを見ると当時のFMフィーバーぶりが伝わってくるのではないでしょうか。
上記の30チューナースクランブルテストでは宇都宮から約100km離れたFM東京(80.0MHz)を遠距離受信するときに、地元NHK-FM宇都宮(80.3MHz)の混信を避けることができるかどうか300kHz隣接局妨害排除能力のテストをしています。
この当時は300kHz隣接局妨害排除能力でよかったのかもしれませんが、コミュニティFM開始後は0.1MHz間隔でFM局がひしめき合うように乱立してきましたので、FM-DXingには300kHzよりさらに厳しい条件の200kHz隣接局妨害排除能力が求められます。
そして2014年から本格的にFM補完放送が始まりました。
元々これはTVがアナログ放送だった時代に使用していた90~108MHzのうち95MHzまでを中波の放送局に開放して難聴地域を減らす計画で始まったのですが、近い将来に民放中波がすべてFM放送に移行することが決定しています。
FM補完放送には76~90MHzを使用している放送局もあるので、FM周波数帯はさらに密になりました。
その一例として山陰放送BSSラジオ(島根・鳥取)のFM補完放送を紹介します。
出力が500Wと低めなので聴ける範囲が狭く、島根に住んでいても西部はサービスエリア外となっています。
ところが島根県から遠く離れた福岡県内の自宅にあるチューナーで常時受信できることがわかりました。枕木山の送信所から距離にして278km離れています。ルート上には500m級の山が数多く点在し、山岳回折によって電波が到達していると考えられます。
枕木山(標高453m)の送信所まで278km(出力500W)
これまでは地元局CROSS FM(87.2MHz)の0.1MHz隣接局なので最初からあきらめていたのですが、最近手に入れたSuper Narrow切替のあるチューナーでたまたま受信できました。
8素子八木アンテナ+Super Narrow切替で偶然受信できたBSSラジオ
もしかしてと思い、ほかのチューナーでも丹念に確認作業すると、Narrow切替にしてファインチューニングで87.07MHzにずらすとちゃんと受信できました。
レベル0ですが聴感上はシグナル2~3出ています。
0.03MHzずらすだけで受信状況が劇的に変わります!
現在ほぼ1日中SINPOコード34433(MONO)でゆったりリスニングできています。BSSラジオは「音楽の風車」という長寿番組が気に入って毎日のリスニングが楽しみになりました(^-^)
次回はこのシリーズ最終回「自宅で400km超のFM放送遠距離受信に挑戦!」をお伝えします。
B級的チューナーで遠距離FM受信を楽しもう(その1) [遠距離受信]
ここでいうB級的チューナーというのは中古市場1万円以下で流通しているチューナーを指します。
チューナーも上を見たらキリがありません。性能の良さそうなアキュフェーズ製品があるのですが、中古でも10万円以上するのでB級派の人間は生涯手にすることはないと思います。
リーズナブルにオーディオを楽しむことが私のポリシーですからそこはご了承ください。
さて最近の小型DSPラジオのFM受信性能は素晴らしく遠距離受信に最適と言えます。
これまでいろんな場所に持って行った受信成果をこのブログで報告しているので、どれくらいすごい性能なのかわかっていただけると思います。
小型DSPラジオを自宅で使うこともできるのですが、スピーカーが小さいので長時間のリスニングには不向きです。
そこでFM黄金時代に各メーカーから発売されたチューナーを使って自宅でゆっくりFM-DXingを楽しんじゃおうというわけです。
FM-DXingするときのチューナー選択のポイントはただ一つです。
・IF BAND切替ができること。そのなかでもSuper Narrow切替があれば最適。
それと大事なことがもう一つ。チューナーの性能を引き出すのはアンテナです。できるだけ屋外に設置しましょう。
1982年以降のFM黄金時代には本当にたくさんの素晴らしいチューナーが発売されました。名機と言われる物が今では1万円台で買えたりしてB級派の人間にとってはうれしいことです。
オークションサイトを眺めて、出品されているチューナーをひとつひとつ地道に調べてみてください。この作業を楽しむのもB級道の極意と言えるでしょう。
ただし、中古市場で出回っている1999年以前のチューナーはそのほとんどが再調整が必要です。私の経験から言うと、周波数ズレ、音声ひずみ、ステレオ受信不可、シグナルレベル表示不良などがあると思っておいて間違いありません。
でもテスターを持っていればなんとか調整できます。購入前にサービスマニュアルが閲覧可能かを確認しておいたほうが無難です。
marantz ST6000とVictor T-X900
KENWOOD KT-6040
上から YAMAHA TX-900 Technics ST-G90 SONY ST-SA50ES PIONEER F-777 KENWOOD L-01T
次回は、IF BAND切替の有無で何が変わるのか実例を示します。
チューナーも上を見たらキリがありません。性能の良さそうなアキュフェーズ製品があるのですが、中古でも10万円以上するのでB級派の人間は生涯手にすることはないと思います。
リーズナブルにオーディオを楽しむことが私のポリシーですからそこはご了承ください。
さて最近の小型DSPラジオのFM受信性能は素晴らしく遠距離受信に最適と言えます。
これまでいろんな場所に持って行った受信成果をこのブログで報告しているので、どれくらいすごい性能なのかわかっていただけると思います。
小型DSPラジオを自宅で使うこともできるのですが、スピーカーが小さいので長時間のリスニングには不向きです。
そこでFM黄金時代に各メーカーから発売されたチューナーを使って自宅でゆっくりFM-DXingを楽しんじゃおうというわけです。
FM-DXingするときのチューナー選択のポイントはただ一つです。
・IF BAND切替ができること。そのなかでもSuper Narrow切替があれば最適。
それと大事なことがもう一つ。チューナーの性能を引き出すのはアンテナです。できるだけ屋外に設置しましょう。
1982年以降のFM黄金時代には本当にたくさんの素晴らしいチューナーが発売されました。名機と言われる物が今では1万円台で買えたりしてB級派の人間にとってはうれしいことです。
オークションサイトを眺めて、出品されているチューナーをひとつひとつ地道に調べてみてください。この作業を楽しむのもB級道の極意と言えるでしょう。
ただし、中古市場で出回っている1999年以前のチューナーはそのほとんどが再調整が必要です。私の経験から言うと、周波数ズレ、音声ひずみ、ステレオ受信不可、シグナルレベル表示不良などがあると思っておいて間違いありません。
でもテスターを持っていればなんとか調整できます。購入前にサービスマニュアルが閲覧可能かを確認しておいたほうが無難です。
marantz ST6000とVictor T-X900
KENWOOD KT-6040
上から YAMAHA TX-900 Technics ST-G90 SONY ST-SA50ES PIONEER F-777 KENWOOD L-01T
次回は、IF BAND切替の有無で何が変わるのか実例を示します。